子どもの睡眠障害が成長の遅れや食欲不振を招いたり、イライラ、集中力不足となって現れたりするケースが多いことが、最近の研究でわかってきた。テレビ、ゲーム機、塾通いなどの影響で夜更かしの子どもが増えているが、子どもは睡眠不足でも、眠気などの自覚症状が出ないことがある。問題行動や学力の低下は、眠りが足りないせいかもしれない。
治療で落ち着き 太田総合病院(川崎市)の耳鼻咽喉(いんこう)科部長、千葉伸太郎さんは、2002年から05年にかけ、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の子ども103人を治療した結果を、大津市で6月末に開かれた日本睡眠学会で報告した。
子どものSASは扁桃(へんとう)の肥大でノドがふさがり起きるケースが多く、切除手術後は症状が軽くなった。それに伴い、遅れていた身体の成長やあごなど顔の骨格の発育が、標準に近づいた。治療後の印象として「急に怒る、泣く」「落ち着きがない」などの精神的な状態が改善したという。
大人では、下あごが小さいとSASになりやすいことが知られており、千葉さんは「治療であごの発育が進めば、成人後のSASを防げる可能性がある」と語った。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)を疑われた子どもがSASとわかり、治療で行動が改善したという報告も、別の医療機関からあった。
海外でも関連指摘 睡眠障害と、多動や学習困難との関係を指摘する研究は海外で多く発表されている。
米ボストン大のグループが5歳児約3000人を対象にした調査では、全体の20%近くに多動と注意力不足、約10%に居眠りが見られた。睡眠時の呼吸障害があった子どもは、そうでない子どもより、いずれも2倍以上、これらの比率が高かった。
トルコのマルマラ大では、いつもいびきをかく小学生96人と、かかない190人を教師と親のアンケートから比較した。いびきをかく児童は多動や注意力不足の割合が約3倍高く、学習の困難や成績低下の割合も多かったという。
肥満にもなりやすい 3歳の時に寝る時刻が遅くて睡眠時間が少ない子どもほど将来、肥満になりやすいというデータも富山大助教授の関根道和さんらが睡眠学会で発表した。1992年に3歳だった富山県の約1万人を追跡し、中学1年になった時のデータを約5500人から得た。3歳の時に睡眠時間が9時間未満だった子どもは、11時間以上だった子どもに比べ、肥満の率が1・59倍だった。
関根さんは「夜間に出る成長ホルモンの分泌が不足して脂肪の分解ができず、肥満になることが考えられる。夜更かしに伴って夜食を取ったり朝食を抜いたりし、昼間は眠くて運動不足になるといった悪循環もある」と見ている。
広島県教委が02年から続けている小学5年生の基礎学力調査では、朝食を毎日取ることと国語、算数のテストの点数に関連があるほか、睡眠時間についても、8時間以上の児童のほうが、6時間以下の児童より、点数が高いという傾向が出ている。
眠気を意識しないことも 文部科学省が昨年、全国の小学4年生から中学生までの約6300人にアンケートした結果では、小4で5・1%、小6で11・8%が午前0時以降に就寝する。中3では64・4%にのぼる。中学生の平均睡眠時間は約10年間で20分短くなったという。
子どもの睡眠障害は、まだ十分に研究されていないが、国立保健医療科学院社会疫学室長の土井由利子さんによると、大人の場合、睡眠が足りないと、日中に居眠りなどをするのに対し、子どもの場合、眠気を意識できないために、動き回ったり、イライラしたりして、眠気を打ち消すような行動をとることがあるという。
土井さんは「集中力不足などの原因が睡眠障害にある場合もあるので、気をつけてほしい。ただ、必要な睡眠時間は子どもでも個人差があり、夜すぐに眠れて、朝すぐに起きることができ、居眠りもしなければ、多くは問題ない」と説明している。
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